インボイス制度導入でファクタリングは終わる?終わらない?激変する請求書買取の未来予測

「インボイス制度が始まったら、ファクタリングは利用できなくなるらしい」

「免税事業者のうちは、もう請求書を買い取ってもらえないかもしれない」

こんにちは。
「ファクタリングジャーナル」編集長の橘です。

私はかつてメガバンクで法人融資を担当し、多くの経営者様の資金繰りのご相談に乗ってまいりました。
その経験から、今、多くの経営者様がインボイス制度の導入を前に、このような不安を抱えていらっしゃるお気持ちが痛いほど分かります。

資金繰りの選択肢が一つ、閉ざされてしまうかもしれない。
取引先との関係にまで影響が及ぶのではないか。
先行きの見えない不安は、日々の経営判断を鈍らせる重石にもなりかねません。

だからこそ、まず最初に結論を申し上げます。

ご安心ください。インボイス制度の導入で、ファクタリングが「終わる」ことはありません。

しかし、これは「何も変わらない」という意味ではないのです。
制度の導入をきっかけに、ファクタリング業界のルールやサービス、そして私たち経営者が選ぶべき道は、確実に、そして大きく変化していくでしょう。

この記事では、元銀行員という客観的な視点から、インボイス制度がファクタリングに与える「本当の影響」を徹底的に分析します。
そして、激動の時代を単に乗り切るだけでなく、むしろ「チャンス」に変えていくために、経営者の皆様が今何をすべきなのかを、具体的にお伝えすることをお約束します。

この記事を読み終える頃には、あなたの心にあったはずの漠然とした不安は、未来へ向けた明確な「羅針盤」へと変わっているはずです。

結論:インボイス制度でファクタリングは「終わらない」。しかしルールの変化は必須

なぜ、ファクタリングは終わらないと断言できるのか。
それは、ファクタリングという取引の根幹が、インボイス制度の枠組みとは別の場所にあるからです。

少し専門的な話になりますが、ファクタリング、すなわち「売掛債権の譲渡」は、国税庁によって消費税の「非課税取引」と明確に定められています。
これは、商品の売買やサービスの提供といった「課税取引」とは性質が異なり、いわば「金銭債権」という資産を移動させる取引だからです。

したがって、あなたの会社がファクタリングを利用する際、ファクタリング会社に支払う手数料に消費税が上乗せされることは、原則としてありません。
この大前提があるため、インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)が導入されたからといって、ファクタリング取引そのものが法律的に成り立たなくなる、ということはあり得ないのです。

では、何が問題なのでしょうか。

変化の本質は、「ファクタリング会社」が制度にどう対応するか、ではありません。
変化の本質は、あなたがファクタリング会社に譲渡する「売掛債権そのものの信用力」が、インボイス制度によって新たな評価軸を持たざるを得なくなる点にあるのです。

銀行員時代、私たちは企業の決算書だけでなく、その事業の将来性や商流の安定性まで見て融資判断を下していました。
それと同じように、これからのファクタリング会社は、売掛先の支払い能力に加え、「その請求書が適格請求書(インボイス)であるか否か」という点を、審査の重要な要素として見なすようになります。

これが、今後のファクタリング業界に訪れる、すべての変化の出発点となると考えるのが妥当です。

なぜ「終わる」と言われるのか?インボイス制度にまつわる3つの大きな誤解

多くの経営者様が不安に感じている背景には、制度の複雑さが引き起こすいくつかの「誤解」が存在します。
ここでは、特に多く寄せられる3つの誤解を解きほぐし、正しい理解への道筋をつけたいと思います。

誤解1:免税事業者の請求書(売掛債権)は買い取ってもらえない?

結論から言えば、免税事業者の発行した請求書(売掛債権)であっても、買い取りは可能です。

先ほどご説明した通り、ファクタリングは非課税取引ですので、あなたが免税事業者であること自体は、取引の成立を妨げる直接的な要因にはなりません。

ただし、「買い取り条件が変わる可能性」は十分に考えられます。
なぜなら、ファクタリング会社は買い取った売掛債権を、売掛先企業から回収することで利益を得ているからです。

もしあなたの売掛先が課税事業者であった場合、あなたの発行した請求書がインボイスでなければ、売掛先は消費税の「仕入税額控除」を受けられず、その分だけ税負担が増えてしまいます。
そうなると、売掛先が支払いを渋ったり、最悪の場合、取引関係の見直しを求めてきたりするリスクがゼロではありません。

ファクタリング会社は、この「回収リスク」を非常に重視します。
そのため、免税事業者の売掛債権に対しては、
「通常よりも手数料を少し高く設定する」
「買取可能な金額の割合(掛目)を低くする」
といった対応を取る可能性が出てくるでしょう。

買い取ってもらえなくなるわけではありませんが、これまでと同じ条件とはいかなくなるケースが想定される、ということです。

誤解2:ファクタリング会社が消費税の仕入税額控除で損をする?

これもよくあるご質問ですが、結論として、ファクタリング会社はインボイス制度によって直接的な損をすることはありません。

繰り返しになりますが、ファクタリングの手数料は非課税です。
ファクタリング会社は、あなたから売掛債権を買い取る際、消費税を支払っているわけではないので、そもそも「仕入税額控除」という概念自体が発生しないのです。

ここで注意すべきは、手数料の内訳です。
ファクタリング利用時には、基本手数料の他に、債権譲渡登記の費用(司法書士報酬)や印紙代といった実費がかかる場合があります。
このうち、司法書士への報酬のような「役務提供」に対する支払いは課税対象となります。

もし、ファクタリング会社から提示された見積書で、基本手数料に消費税が上乗せされている場合は注意が必要です。
制度への理解が浅いか、あるいは意図的に利益を上乗せしようとしている悪質な業者である可能性も否定できません。

誤解3:手続きが複雑化して、誰も使わなくなる?

手続きの複雑化を懸念する声も聞かれますが、私はむしろ逆の未来を予測しています。
つまり、インボイス制度はファクタリングのオンライン化・効率化をさらに加速させるでしょう。

インボイス制度の導入は、社会全体のペーパーレス化、特に「電子インボイス(デジタルインボイス)」の普及を強力に後押しします。
紙の請求書を印刷し、封筒に入れて郵送し、受け取った側が手入力でシステムに登録する、という一連のアナログな作業は、今後急速に過去のものとなっていくはずです。

請求書がデータとしてやり取りされるようになれば、オンライン完結型のファクタリングサービスとの親和性は極めて高くなります。
データの正当性も確認しやすく、審査のスピードは格段に向上するでしょう。

将来的には、会計ソフトとファクタリングサービスが連携し、ボタン一つで資金調達の申請が完了する、といったことも当たり前になるかもしれません。
手続きは複雑化するどころか、よりスピーディで、透明性の高いものへと進化していく可能性を秘めているのです。

【本質予測】元銀行員が分析する、インボイス制度導入後のファクタリング業界5つの変化

誤解が解けたところで、ここからは本題である「未来予測」に入ります。
元銀行員として金融業界の力学を見てきた経験と、現在のコンサルタントとしての知見を総動員し、インボイス制度導入後のファクタリング業界に起こるであろう5つの本質的な変化を解説します。

変化1:審査の重点が変わる。「適格請求書発行事業者か否か」が新たな指標に

これは最も確実性の高い変化と言えるでしょう。
従来のファクタリング審査は、主に「売掛先企業の信用力」が重視されてきました。
しかし今後は、それに加えて「売り手(ファクタリング利用者)が適格請求書発行事業者であるか否か」という点が、新たな評価指標として組み込まれます。

銀行が融資審査の際に、企業のコンプライアンス遵守体制を厳しくチェックするのと似ています。
適格請求書発行事業者であるということは、国が定めたルールに則って事業を運営している証左であり、それ自体が一種の「信用」となるのです。

この結果、適格請求書発行事業者である企業は、より有利な条件(低い手数料率、高い掛目)でファクタリングを利用できる可能性が高まります。
逆に、免税事業者のままでいることを選択した企業は、一定のハンディキャップを負う場面が出てくるかもしれません。

変化2:「免税事業者向け」に特化したファクタリングサービスの登場

需要があるところに、新しいサービスが生まれるのが市場の原理です。
インボイス制度導入後も、様々な理由から免税事業者のままでいることを選択する事業者は、一定数存在し続けるでしょう。

そうした事業者の方々の資金調達ニーズに応えるべく、「免税事業者向け」に特化した新しいファクタリングサービスが登場すると予測しています。
例えば、以下のようなサービスが考えられます。

  • リスク許容型の高手数料モデル:通常より手数料は高いが、免税事業者の債権を積極的に買い取るサービス。
  • コンサルティング一体型モデル:ファクタリングの提供と併せて、課税事業者への転換支援や、取引先との交渉アドバイスなどを行う付加価値の高いサービス。
  • 業界特化型モデル:特定の業界(例:建設、ITフリーランスなど)に特化し、その業界特有の商慣習を理解した上で柔軟な審査を行うサービス。

資金調達の選択肢が狭まるのではなく、より細分化・多様化していく可能性もあるのです。

変化3:ファクタリング会社の「二極化」が進む

制度の変更は、業界にとって一種の「ふるい」のような役割を果たします。
今回のインボイス制度導入は、ファクタリング会社の淘汰と再編を促し、業界の「二極化」を加速させるでしょう。

生き残るのは、一方では、豊富な資金力と技術力を背景に、電子インボイスへの対応や新たな審査モデルの構築に迅速に対応できる大手・中堅ファクタリング会社です。
そしてもう一方では、特定のニッチな領域に特化し、独自のノウハウで高い専門性を発揮する小規模な優良企業でしょう。

その中間で、旧態依然とした紙ベースの業務から脱却できず、制度変更への対応が遅れたファクタリング会社は、競争力を失い、徐々に市場から淘汰されていく可能性が高いと見ています。
私たち経営者にとっては、どの会社が未来を見据えて変化に対応しているのか、その「目利き」が一層重要になります。

変化4:電子インボイス(デジタルインボイス)の普及とオンラインファクタリングの加速

これは「誤解3」でも触れましたが、極めて重要な変化です。
請求書が電子データ化されることは、ファクタリング取引のプロセスを根底から変革します。

請求書データの改ざんリスクが低減され、二重譲渡といった不正もシステム的に防止しやすくなります。
これにより、ファクタリング会社は審査コストを大幅に削減でき、その分を手数料の引き下げやサービスの向上に還元できるかもしれません。

数日かかっていた審査・入金が数時間、あるいは数分で完了する。
契約もすべてオンラインで完結し、面談の必要もない。
こうした、より迅速で透明性の高いオンラインファクタリングが、間違いなく業界の主流となっていくでしょう。

変化5:銀行融資が慎重になる中、資金調達手段としての「重要性」はむしろ高まる

最後に、銀行融資との比較という視点からお話しします。
銀行員だった私の経験上、新しい制度が導入された直後というのは、金融機関が最も融資に慎重になる時期の一つです。

インボイス制度によって取引先の税負担がどう変わるのか、サプライチェーン全体にどのような影響が出るのか、その実態が明らかになるまで、銀行はリスクを取ることに及び腰になりがちです。
特に、これまで免税事業者との取引が多かった企業に対しては、審査のハードルが一時的に上がる可能性も考えられます。

このような状況下で、銀行融資以外のスピーディな資金調達手段の価値は、相対的に高まります。
「つなぎ資金が急に必要になった」「大型案件の受注が決まったが、手元の資金が心許ない」
こうした場面で、数日で資金化できるファクタリングの重要性は、これまで以上に増していくと、私は確信しています。

激動の時代を乗り切る!経営者が今すぐやるべき3つのチェックポイント

未来予測を踏まえ、最後に、経営者の皆様が「今すぐ」取り組むべき具体的なアクションを3つのチェックポイントとしてまとめました。
ぜひ、ご自身の状況と照らし合わせながらご確認ください。

Point1:自社と主要取引先の「インボイス登録状況」を必ず確認する

まずは現状把握からです。
ご自身が適格請求書発行事業者に登録しているか(あるいは登録する予定か)はもちろんのこと、主要な売掛先と仕入先の登録状況も必ず確認してください。

もし、あなたの主要な売掛先が免税事業者のままでいる場合、その売掛債権はファクタリング会社から見て「回収リスクが高い」と判断される可能性があります。
逆に、あなたが免税事業者で、主要な売掛先が課税事業者である場合、取引条件の見直しを求められる可能性に備える必要があります。

自社と取引先の状況を正確に把握することが、すべての対策の第一歩です。

Point2:「インボイス制度対応」を明言しているファクタリング会社を選ぶ

これからファクタリング会社の利用を検討する際は、その会社がインボイス制度にどう対応する方針なのかを、必ず事前に確認しましょう。

会社の公式サイトにある「お知らせ」や「よくある質問(FAQ)」といったページに、
「当社のインボイス制度への対応について」
といった記載があるかを確認するのが最も手軽で確実な方法です。

制度への対応方針を明確に示している会社は、コンプライアンス意識が高く、将来の変化にも柔軟に対応できる優良企業である可能性が高いと言えるでしょう。
逆に、この点について曖昧な説明しかできない会社は、利用を避けるのが賢明です。

Point3:手数料の内訳と契約内容をこれまで以上に精査する

制度の移行期には、残念ながら、それを悪用しようとする業者も現れます。
「インボイス対応のためのシステム費用」といった、もっともらしい名目で不当な手数料を請求してくるケースも想定されます。

契約前には、必ず見積書を取り寄せ、手数料の内訳を精査してください。
先述の通り、ファクタリングの基本手数料は非課税です。
もし、そこに消費税が上乗せされていたり、不明瞭な項目があったりした場合は、納得がいくまで説明を求め、決して安易に契約しないようにしてください。

契約書にサインをする前に、専門家や顧問税理士に相談することも非常に有効な手段です。

まとめ:未来を悲観せず、変化を乗りこなす経営者であるために

最後に、この記事の要点を改めて整理します。

  • ファクタリングは終わりません。 債権譲渡は非課税取引であり、制度の直接的な影響は受けないからです。
  • 終わると言われる背景には3つの誤解(免税事業者は利用不可、ファクタリング会社が損をする、手続きが複雑化)がありますが、いずれも正しくありません。
  • 今後は5つの変化(審査重点の変化、新サービスの登場、業界の二極化、オンライン化の加速、重要性の向上)が予測されます。
  • 経営者が今やるべきは3つのチェック(取引先の登録状況確認、対応明言の会社選び、契約内容の精査)です。

インボイス制度の導入は、多くの経営者様にとって、頭の痛い課題であることは間違いありません。
しかし、すべての変化は、見方を変えれば「機会」でもあります。

これを機に、これまで当たり前だと思っていた自社の取引の流れや、資金繰りの方法を根本から見直してみる。
より信頼できる取引先はどこか、より自社に合った資金調達手段は何かを、真剣に考える。
そうした取り組みが、結果としてあなたの会社の財務体質をより強固なものへと変えていくはずです。

私が銀行を辞めて独立し、この「ファクタリングジャーナル」というメディアを運営している根底には、「情報格差をなくし、すべての経営者に公正な資金調達の選択肢を提供したい」という強い想いがあります。
銀行融資だけが選択肢ではありません。
そして、変化を前に立ちすくむ必要もありません。

正しい知識を武器に、変化の波を乗りこなし、未来を自らの手で切り拓いていく。
この記事が、そのための力強い一助となれば、これに勝る喜びはありません。

あなたの会社の未来を、心から応援しています。